DTPの導入はまた、経営方針そのものを大きく転換させる契機ともなっている。DTPを導入した前年の平成3年、同社は現在、営業・制作本部として機能している『森町スタジオ』を新設したが、これを拠点にDTPをフル活用しながら印刷業にとって不可欠の企画・デザイン力を前面に打ち出すことで差別化を図り、ますます多様化・複雑化する顧客ニーズに対応する体制を構築するとともに、その後、保険代理業やIT関連のソフト開発、インターネット等による健康食品等の販売を行う『森町企画』と『イーナビ(有)』を森町スタジオ内に設置して業務分野を拡大、単なる印刷業の域にとどまらない“情報新世紀の印刷業”をめざした取り組みを強化しているところである。
現在、同社では本社は印刷工場に特化、森町スタジオでは写真撮影から企画・デザインを含めた各種出版物や企業PRビデオ・TVCM・コンピュータグラフィックス・イラスト・ホームページ等のマルチメディア関連の制作、森町企画ではイベント企画をはじめ保険代理業やIT関連のソフト開発、インターネット等による健康食品販売等を行っているが、得丸社長は「今後、いくらITやインターネットが普及しても印刷物がなくなることはない」とし、「森町スタジオと森町企画を両輪に新たな分野に積極的に挑んでいく」方針だ。
中でも、「今後力を入れていく」のが、すでに森町企画で取り組みを行っているインターネット等による健康食品等の販売とこれに関するコンサルティングである。健康食品の販売はもともと健康への関心が高い得丸社長が自ら愛用している商品の販売を目的に立ち上げた事業で、本業の印刷を通して優れた商品に出会う機会も多く、今後順次取り扱い商品を増やしていく意向である。また、イーナビ(有)では正博社長の長男の明浩氏のSE(システムエンジニア)の知識を生かし、情報や物販を会員制ネットワークを通して幅広く展開中である。
今後、デジタル技術の急速な進展についていけない印刷業が淘汰されるのは必至だが、印刷にIT(インターネット等)を絡めながら“情報新世紀の印刷業”をめざす同社の取り組みに注目したい。