元気印の中小企業

　核家族化や高齢化社会の進行とともに、ペットに対する考え方・意識が飼う時代から一緒に暮らす時代へと変化、今やペットは大切な家族の一員として人々の生活の中に深くとけ込んでいる。だが、生き物に死はつきもの。可愛がっているほど、その悲しみは深いが、死んでしまえば行政上は廃棄物（ゴミ）扱いというのが実態だ。「それではあまりにも可哀想」と、九州初のペットの葬祭・霊園事業を始め、現在では飼い主の心のケアーまでも行う“癒しの場”を提供しているのが、『有限会社ペットフレンドおおいた』だ。

●“心の癒しの場”を提供

　『（有）ペットフレンドおおいた』の創業は昭和46年。当時はまだペット市場という言葉さえなく、ましてや動物を火葬したり供養することが嫌がられる時代だった。ペット好きで、大分市で犬の美容室を経営していた花井和子代表が、「生きている時は子供・友達として可愛がっていたのに、死んでしまったらゴミ扱いというのではあまりにも可哀想」と、前身の『大分ペット霊園・葬祭社』を創業、津久見市に小さなペット霊園を開いたもの。
　「お客様から『火葬してあげたい。何とかならないか』と相談されたのがきっかけでした。火葬方法さえ分かりませんでしたが、津久見市でミカン畑だった土地を譲ってくれる方があり、そこを整地してささやかな火葬場と墓地をつくったのがはじまりです」。
　ペットブームの高まりに中で、現在でこそフード・用品等を含めて１兆円とも２兆円ともいわれるペット市場だが、花井さん自身が「少なくともゴミとして捨てないで供養する時代がくるだろうとは考えていましたが、今のように会社組織（平成３年に法人化して現社名）になるなんて思ってもいなかった」というスタートだった。
　その言葉通り、開業当初の依頼件数は「年に１、２件」という状況だったとか。それが現在は３ヶ所の霊園を合わせると計5,000体ものペット遺骨を預かる盛況ぶりで、中には３代に亘って遺骨を納めている人もいるそうだ。花井さんは、「価値観の変化や生活が豊かになったことも背景にある」とみているが、それだけではない。大切なペットを亡くした人たちに対するきめの細かい配慮と“心の癒しの場”の提供が大きく寄与しているようだ。

●大好評のバラ湯用花の宅配

　『ペットフレンドおおいた』では現在、春季・秋季の合同慰霊祭や春秋の彼岸、盆会等年間を通じた慰霊のための祭事を行っているのをはじめ、毎月第３日曜日には本社に隣接したメモリアルルーム夢で「供養の日」及び「ペットの思い出を語りあう会」を開催している。
　中でも、「ペットの思い出を語りあう会」は同じ悲しみを持つ人が集まり、みんなで楽しかったことを語り合う場を設けているものだ。この会には臨床心理カウンセラーも参加、共通の話題を持つ飼い主がお互いに思い出を語り合いながら心を癒し、元気を取り戻す場となっており、「今はいろんな所がペット葬祭・霊園事業を手がけるようになっていますが、こうした飼い主の心のケアーまで行っているところはほとんどない」というユニークな取り組みだ。「無類の動物好き」という花井さんのペットに対する限りない愛情から生まれた、いわば“商売抜き”のサービスの提供こそが飼い主の心を捉えているといっても過言ではないだろう。
　『ペットフレンドおおいた』は最近、新しい事業を開始した。「いやしのバラ」と名付けた家庭で楽しむバラ湯用花の宅配事業がそれだ。もともとは火葬の際にバラの花を棺の中に入れていたが、ひどく落ち込んでいた年配夫婦に「お風呂に入れて使ってください」と贈ったところ、非常に喜ばれたことから、「バラ風呂なんて温泉でもないと入れないし、年配者にとっては何となく気恥ずかしいもの。
　これを宅配という形にしたらおもしろいのでは」と考えて始めたものだが、新聞紙上やＴＶで取り上げられたこともあって、昨年のＸマスやホワイトデーには九州・四国から注文が殺到したという“ヒット商品”だ。１袋に約100個のバラの花が入り、2,300円（県内）で４～５回は楽しめるという価格設定のため、「ほとんど利益はないが、癒しに通じればよい」とし、癒しを最も重視している葬祭・霊園事業の延長線上にあるとの考え方だ。
　花井さんはこの30年間を振り返り、「ここまでやってこれたのは皆さんに支えられてのこと。火葬するのは誰にでもできます。火葬自体が目的ではなく、火葬して供養することで、ペットに対して『ありがとう』と感謝の念を抱き、心を和ませ、癒していただくための安らぎの場を提供できれば」と語り、今後もペットを通じた交流の場づくりに力を入れていく方針で、将来的には交通の便がよい南大分に、獣医師の子息と共同でペット用の美容室やホテルを備えた動物病院を整備、「ペットに関するあらゆる面倒をみれる施設をつくりたい」と大きな夢を描いている。

事業所プロフィール
会社名	有限会社ペットフレンドおおいた
所在地	大分市田中町８の１　　Tel 097－544－2223
代表者	花井和子
資本金	５００万円
従業員数	４名
事業内容	ペット葬祭・霊園事業、「いやしのバラ」宅配
創　業	昭和４６年
ＵＲＬ	http://www10.ocn.ne.jp/~p-friend/